Research Center for Social Psychology


第18回KG-RCSPセミナー

2017年12月07日 12:40

第18回KG-RCSPセミナーを,下記の通り開催しました.

【日時】2018年1月19日(金)15:10~18:20
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 図書館ホール(関西学院大学図書館B1F) キャンパスマップ
【発表者】竹澤正哲 氏(北海道大学大学院文学研究科・北海道大学社会科学実験研究センター)
タイトル】協力の進化:行動科学者は、この学際的な研究に何を貢献しうるのか

【概要】協力の進化と呼ばれる研究は、自然科学と社会科学、数理モデルと実証研究が互いに影響を与えながら発展してきた。21世紀に入ると、群淘汰、遺伝子と文化の共進化といった、生物学に出自を持つ概念を使って人間の協力を説明しようとする動きが加速する。だがこの動きは、偏狭な利他主義を巡る論争に代表されるように、研究者の間に様々な誤解や混乱をもたらしている。

本発表ではまず、協力の進化を巡る近年の理論研究を整理した上で、「人間は偏狭な利他主義者であるはずだ」とか「人間は集団間での争いに勝ち抜くために協力的な性向を獲得したのだ」といった類の主張が、理論モデルから必然的に導かれるわけではないことを指摘する。続いて、協力の進化における理論研究から、心理学者が汲み取るべき最も重要なメッセージとは、人口動態や集団構造の重要性であることを指摘する。そして、心理学者が行うような行動実験が、この研究テーマに対してどのように貢献しうるのか、具体例を通して議論する。

【抱負】質疑応答込みで3時間のトークという稀有な機会を頂いた。そこで、「協力の進化」という大きな問いを巡る理論研究の現状を、専門家でない心理学者にも理解してもらえるように紹介した上で、心理学者がこの学際的な研究領域に対してどのように貢献していくことができるのか、聴衆とともに議論したい。

※参加無料
※学内外を問わず,事前申込は不要ですが,資料準備等の都合上,学外の方は清水裕士(simizu706(at)gmail.com)宛にご一報をいただけると助かります.

【報告】まず、ヒトの心や行動はどのように進化してきたのか。この問題について心理学だけでなく生物学や生態学、認知科学で展開されている研究について紹介していただきました。
続いて、ヒトの協力傾向を進化の観点から説明する理論についていくつか紹介されたのち、マルチレベル淘汰理論について詳しく解説されました。そして、そのマルチレベル淘汰理論が主張する偏狭さや戦争のための協力、という傾向が理論的な必然性を持つわけではなく、むしろ人口動態や集団構造のあり方こそが重要な要因となりうることを指摘されました。
最後に、協力傾向についての強化学習モデルについての最新の研究について紹介されました。ヒトの協力は互恵的利他主義の予想とは異なり、むしろ他者の行動に対する学習によって説明されるのではないか、という主張がなされました。
質疑応答では、戦争を前提とした協力の説明の是非、進化理論と強化学習理論との関係などについてディスカッションが行われました。(清水裕士・記)

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